芸能界の珍姓稀姓といえば、長らく女優の綾瀬はるかの本名・蓼丸綾の「蓼丸」（たでまる）姓が各種の珍姓稀姓ランキング紹介記事において１位に君臨。女優、榮倉奈々の「榮倉」（えいくら）姓も、かなり珍しい姓として注目を集めており、この２人が”珍姓稀姓ツートップ”といった印象がありました。
ところが、最近では、ジャニーズ事務所に所属する「なにわ男子」のメンバー、道枝駿佑、ＡＫＢ４８のメンバー、道枝咲の名字である「道枝」（みちえだ）姓が１位となるケースも多くなっています。
確かに道枝姓は名字由来ｎｅｔのランキングで言えば、蓼丸姓と３６００位の差があります。ちなみに、道枝駿佑は大阪府の出身。道枝咲は神奈川県出身。珍しい名字のため、兄妹説も出たそうですが、どうやら違うようです。
では本題に入りますが、「道枝」姓は、本当に芸能界第１位の珍姓稀姓なのでしょうか？ 参考までに言えば、道枝駿佑は３人きょうだい、道枝咲は７人きょうだいの長女なんだそうです。つまり、道枝両家の子供たちだけで１０人。それぞれに両親がいるので、すでに１４人（夫婦同姓だとして）となります。年齢的に見れば祖父母が健在の可能性もありますので、あっという間に２０人近くにふくれあがります。
名字由来ｎｅｔの解説では「長崎県にみられる」とあります。そこで本名での登録が原則となっているＦａｃｅｂｏｏｋを見てみると、道枝姓を名乗る方が複数いることからも、「およそ１０人」という数字には、かなりの疑念が残ります。というか、「およそ１０人」と表記される名字は約２万７０００ほどあるのですが、そのほとんどが、そんなに少ないわけないだろうなぁ…というのが私の見解です。イメージ的には「道枝」姓よりも「蓼丸」姓の方が珍しい気がします。
ちなみに榮倉姓の場合は、名字由来ｎｅｔの全国順位も全国人数も調査中のため、芸能界珍姓奇姓の上位にランクされるわけですが、Ｆａｃｅｂｏｏｋでは３０人以上もいます（中には本名ではない方もいますが）ので、実際はそれほど珍しい名字ではないのかもしれません。
話は逸れますが、もしも本名の蓼丸綾のまま活動していたら、今と同じぐらいの人気女優になっていたのかなぁと、気になるところです。人気がなければ「蓼丸」姓自体も脚光を浴びることはなかったでしょうし。
芸能人の名字の話に戻しますが、俳優香川照之の父親で歌舞伎役者の二代目市川猿翁（三代目市川猿之助）の本名は、喜熨斗政彦（きのし・まさひこ）。この「喜熨斗」姓もかなり珍しいです。
この姓も「およそ１０人」と記載されていますが、弟には四代目市川段四郎（喜熨斗宏之）がおり、その息子が四代目市川猿之助（喜熨斗孝彦）。名字由来ｎｅｔの「喜熨斗さん有名人一覧」の項目には、歌舞伎関係の喜熨斗一族を含め１４人が掲載されています。亡くなられた方も何人か含まれていますが、それぞれに家族がいる（段四郎と猿之助のように重複するケースもありますが）わけですので、到底「およそ１０人」などということはありえません。さらに言えば、Ｆａｃｅｂｏｏｋを見ても、有名人一覧には入っていない一般人の「喜熨斗」さんも１０人以上います。やはりその方たちにも家族がいるわけですから…。それを考えると、「およそ１０人」とは、あまりにもアバウトすぎます。
そもそも、おなじ「およそ１０人」という姓がたくさんある中、名字由来ｎｅｔ側が、どうやって順位づけしているのか、まったくわかりませんが、順位が割り振られている以上、「道枝１位」というのは仕方ないのでしょうが、素直に受け入れ難いのもまた事実です。
それにはワケがあります。実は本名でありながら全国順位、全国人数ともに「調査中」という姓も存在しているからです。
先ほど紹介した榮倉姓が代表例。このほか、俳優の志尊淳（しそん・じゅん）の「志尊」姓も同じく「調査中」。日本姓氏語源辞典では、「東京都。フィリピン人の姓にシソン（Ｓｉｓｏｎ）あり。シナ起源で『四孫』が原義」とありますが、志尊淳は東京都出身の日本人ですので、ここではフィリピン及び中国由来説については無視していいかと思います。分布についても、「データがありません。極めて希少な名字（姓氏）です」とあるので、間違いなく珍しいでしょう。丹羽基二監修の「日本姓氏大辞典」にも記載はありません。志尊自身は過去にテレビのバラエティー番組で本名であることを明かしています。
よって芸能界の珍姓稀姓１位は、「志尊」姓かもしれません。
※追記 記事中でも触れた名字由来ｎｅｔの「およそ１０人」という表記に関する解釈を載せてみましたのでご一読を。
